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シカゴ(270万人)

  • 19世紀後半から20世紀中盤までアメリカ国内における鉄道・航空・水運の拠点として、また、五大湖工業地帯の中心として発展した都市である。現在は、ニューヨーク、ロサンゼルスに次いで人口では3番目の大都市である。

  • シカゴ市では、シカゴ市上下水道局CDWM:Chicago Department of Water Managementが、市内及び周辺地区に対し、450万人、280万m3/日の水を供給しており、その給水人口はイリノイ州全体の42%に上る。

  • シカゴ水道は、ミシガン湖の沖合3km地点の取水塔から、湖底下60mにあるトンネルを通じて、湖岸の2つの浄水場に導水する形になっている。浄水場の1つは南側のSawyer浄水場(1947年完成)、もう1つは北側のJames Jardine浄水場(1968年完成)である。

  • CDWMは下水処理も行っている。域内に巨大な湖、ミシガン湖を抱えているため、日本の琵琶湖などと同じように、湖水の水質保全に腐心している。域内の下水排水はミシガン湖に戻すのではなく、最終的には、はるか南のメキシコ湾に流れることとなるミシシッピ川流域に排出するために、雨水排水処理、水路、運河、舟運などを組み合わせた総合的な排水システム計画TARP:Tunnel and Reservoir Planが実行されている。

  • 下水・雨水の最終処理は首都圏水再生事業団MWRD:Metropolitan Water Reclamation District of Greater Chicagoが行っている。

イリノイ州の位置図

イリノイ州の位置図

クック・カウンティとシカゴ市位置図

クック・カウンティとシカゴ市位置図

シカゴ水道:ミシガン湖取水塔クリブ(Cribs)

  • シカゴ水道は、ミシガン湖、内陸部の2つの河川(Fox川とKankakee川)と地下水を水源としている。大部分はミシガン湖系統で、シカゴ市を含む200自治体に給水されている。

  • ミシガン湖からの取水は、連邦最高裁の決定により800万m3/日に制限されているが、需要増を見込んでも、2030年までの地域の水需要には対応できると思われている。

  • ミシガン湖の水利権付与は州政府が管理しており、現在の水利権には許可条件として追加的な環境対策が必要とされている。

  • シカゴ水道がミシガン湖から取水する施設は「クリブcribs」と呼ばれている。形状は円であったり、楕円形であったりするが、その直径は3-6m程度である。

  • 取水された水は、湖底下60mに設置されたトンネルを通じて、対岸のポンプ場に送られ、そこから、Jardine浄水場(1968年稼働)とSawyer浄水場(1947年稼働)の2つの浄水場に導水されている。Cribはこれまで9基建設されたが、現在は2基が稼働している。浄水場からは、自然流下で市内12か所のポンプ場に送水され、ポンプ場からは市内の配水管網にポンプ送水されている。

左:William E. Dever Crib 右:Carter H. Harrison Crib
両者はブリッジで結ばれている。

左:William E. Dever Crib 右:Carter H. Harrison Crib

Two-Mile Crib(1865)の概念図

Two-Mile Crib(1865)の概念図

1865年以来建設されたcribs

1865年以来建設されたcribs

シカゴ下水道:MWRDによるTARP事業

  • MWRDは、シカゴ市を含むクックCookカウンティの下水処理と雨水排水を行っている、特別な自治体である。

  • 2,000人の職員、3,000億円の年間予算を有し、その起債の格付けはAAA/ AA+である。MWRDは、7つの処理再生施設、560kmの幹線管渠、23のポンプ場、33の雨水貯留池、3つのトンネル貯留施設を保有している。この他、内陸部の舟運の一部としての水路120kmを運転している。この水路は、ミシシッピ川を通じて五大湖とメキシコ湾をつなぐものとなっている。

  • MWRDは、600万m3/日の排水処理を行い、その過程で、電気、バイオ燃料、藻類、リン、窒素、その他の栄養塩を回収している。

  • 下水の排水は、イリノイ州政府EPA(IEPA)の基準に基づいて、集水、処理されている。その結果は、連邦政府EPAのNPDES:National Pollutant Discharge Elimination Systemに登載されている。

  • このような観点から下水処理を行うMWRDは、域内の下水排水はミシガン湖に流入させず、最終的には、メキシコ湾に流れることとなるミシシッピ川に排出するために、雨水排水処理、水路、運河、舟運などを組み合わた総合的な排水システムを構築している。域内に張りめぐらされているTARPという巨大な水路網、雨水貯留池網がそれである。

TARP事業

TARP事業

写真:McCook Reservoir貯留池は、シカゴ舟運水路(左側)とDes Plaines川(右側)に設置されている。

McCook Reservoir貯留池

​雨水貯留池の一例

​雨水貯留池の一例
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