20251019更新
20250409公開開始
フェニックス(120万人)・メサ(50万人)
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フェニックスはアリゾナ州の州都で同州最大の都市である。砂漠の中にありながらも全米有数の工業都市である。メサは、その東方に位置しており、成長著しい大都市フェニックスの郊外都市である。
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フェニックス都市圏の水道は、主として、アリゾナ州を含む8つの州にまたがるコロラド河からの導水事業と、都市圏の東方の山岳地帯からの導水事業に依存しているが、域内の地下水や下水処理水の再利用なども行っている。
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SRP:州内のSalt川、Verde川、東部クリークからの水を貯留する7つのダムを管理している導水路事業の名称であり、その運営主体の名称でもある。都市圏の半分以上の水がこのSRPから供給されている。
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CAP:コロラド河にの水をカリフォルニア州とともに分水するための供給しており、SRPに次ぐ2番目の水源である。
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再生水:人の食べない穀物の灌漑用水や家庭の修景用水などに使われている。
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地下水:SRPは、表流水導水の補助的水源として270の井戸を保有している。各自治体も、個別に、地下水水源をもっている。
 
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アリゾナ州の位置図

フェニックス市の位置図

メサ市の位置図

フェニックス都市圏の水道:SRP導水事業
SRP:Salt River Project
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SRPの歴史は1903年にまでさかのぼる。1903年、地域の牧場主や農業団体が、この地域の牧場主や農民が、Salt Riverの洪水を防ぎ、地域開発を進めるため、連邦政府にTheodore Rooseveltダムの建設を中心とするSRPの事業の必要性を訴えた。
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彼らはSRPの資金調達のため、今日の、組織としてSRPの前身となる「Salt River Valley利水者協議会」を設立した。
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SRPの業務は、アリゾナでの最初のダムであるルーズベルトダムとともに始まり、この地域の数百万人の住民に水を送るための貯水池、川、ダム、運河などの水資源開発事業に成長していった。
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SRP事業は、ソルト川及びヴェルデ川とEast Clear Creekの流域の7つの貯水池を運用するものである。フェニックス都市圏の水の半分以上はこのSRP事業からもたらされている。コロラド川からのCAP導水よりもその割合は大きく、CAP導水は2番目である。
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SRPの水はフェニックス都市圏全体に供給されているが、乾燥地帯における水の有効利用のため、その下水処理水も、もう一度、非食物用穀物の灌漑用水や修景用水等のために再利用されている。
 
【現在の課題】
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貯水池容量の拡大:2024年度、SRPは、Rooseveltダムの洪水調節のための調節容量を、5年間の水計算期間において20日間から120日間に拡大するダム操作規則の変更の検討を始めた。この変更は、SRP、連邦政府の陸軍工兵隊及び干拓局、その他自治体やインディアン保護区や農業団体などとの協力の中で計画されたものである。
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この操作により下流に放流しないことによって、去年であれば1.3億m3を余分に貯留できた。この水量はフェニックス市住民の33万人分の生活用水に相当する。この計画は、この地域の温暖化と降雨量減少に対応するためのもっと大きな計画の一部になっており、旱魃期間中のこの地域の水を確保することに重点を置いている。
SRPはこの他、雨期の洪水をもっと利用するために、今後10年間でVerde川水系の貯水量を増やすことを考えている。 
Salt川流域とVerde川流域の位置

SRP事業の主要な施設(貯水池・導水路)

フェニックス都市圏の水道:CAP導水事業
CAP:Central Arizona Project
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CAP:Central Arizona Projectは、コロラド川のHavasu湖(パーカーダム)からツーソン市南西部の終点までの、延長530kmの導水路である。コロラド川からの取水枠として17億m3/年の権利を持っている。Havasu湖(パーカーダム)は、右岸のカリフォルニア側に導水するコロラド導水の起点でもある。
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CAPの主たる施設は、トンネル4、サイフォン10、ポンプ場14、ラジアルゲート39、分岐箇所50以上である。このほか、導水路の中間あたり、フェニックス市の北方にあるPleasant湖が、CAP導水全体の流量調整機能を果たしている。
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導水開始は1985年、そのうち都市水道に54%、ネイティブ保護区に46%供給している。地域的には、Maricopa・Pinal・Pimaカウンティに供給しているが、この地域の人口はアリゾナ州の全人口の80%を占める。
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CAPの運営主体はCAWCD:Central Arizona Water Conservation Districtである。CAWCDは、課税権のある、複数カウンティにまたがる特別自治体である。Maricopa、Pima、Pinalの3カウンティから選出された15人の理事で構成されている。CAP導水事業は水路延長530kmで、Havasu湖からツーソン市南部まで導水するものである。CAWCDの業務は、CAP導水からの分水、CAP建設費の償還、CAP導水の運転管理である。
 
【沿革】
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1946年、CAP建設推進のために、連邦議会に対してロビー活動を行うためのCAP協会が設立された。22年後の1968年、リンドン・ジョンソン大統領がCAP建設を承認する法案に署名し、CAP事業が決定された。
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1971年、CAP完成後、CAP施設の運転管理のためCAWCD:Central Arizona Water Conservation Districtが設立された。
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1973年、工事がHavasu湖から始まり、20年後、ツーソン市南部まで開通して完成した。総事業費は40億ドルだった(1980年代のドル円250円程度で計算すれば総事業費は1兆円)。ツーソン市は、1990年代になって初めてCAPから受水することとなった。
 
【現状の課題】
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CAPとアリゾナ州政府は、水源の増強と節水プロジェクトに関して積極的に協力している。例えば、Brockダム湖ではメキシコ側に流出する水量を減らすための州間の協力、Yuma脱塩プラントのような脱塩や潅水地下水のプロジェクト、さらにメキシコとの2国間脱塩プラント構想などがそうである。
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CAPは、また、ネバダ南部水道事業団との共同事業の可能性を模索している。
 
CAP導水事業(ハバス湖~フェニックス~ツーソン)
