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市町村

  • 米国の第2階層自治体は、cities、towns、townships、charter townships、villages、boroughsなどいろいろな呼称の組織が存在しており、州毎に、また、歴史的理由で、日本人から見ると、極めて雑多な類型となっている。日本の自治体は、地方自治法に基づいて設立されており、当然に法人格を持っているが、米国では、自治体として法人格はないが、実質的に、自治体的な活動をしている、いわば、町内会的な組織もある。そこで法人格を取得させ、州法の規定に基づく組織として、ある程度、均一な自治体類型に当てはめようというようなことが各州で行われている。

【Municipal governments】

  • 州法に基づいて設立された自治体で、人口密集地域を中心に、一般的な公共サービスを提供する組織である。日本でいう市町村に当たる自治体である。Municipalityは、自治体としての法人格を有しており、全米自治体調査における非法人化区域に対応する概念である。
    Municipalityの規模は、人口1人の村(Monowi村・Nebraska)から人口850万人のニューヨーク市まである。自治能力、自治権限の程度は極めて異なるが、全米には30,000のMunicipalityがある。

【town/township governments】

  • Townshipは、カウンティの下位に位置する、米国で広く使われている自治体の名称である。New England, New York, Wisconsinで使われているtownはcivil townshipと同じ意味で使われている。Minnesotaでは、town/townshipは同じ意味で使われている。Townshipの権限と自治の程度は州により異なる。
    Townshipは、一般的に、数人から構成される行政委員会的な組織によって運営されている。日本にはなじみのない存在なのでイメージしにくいが、選挙で選ばれた数人の議員が、執行部を構成する(場合によっては首長を選出する)。その数人の議員は、市政担当官clerk、市政受託者trustee、市長mayorなどと呼ばれている。Townshipには専門職員として、紛争仲裁、道路管理者、法務顧問、警察、測量などの担当管が配置されている。

【Special districts】

  • Special districtsは、special service districts、special district governments、limited purpose entitiesなどとも呼ばれるが、county, municipal, townshipなどの一般自治体とは別に存在する、独立した、特定目的の自治体である。1つまたは関連する複数の目的を達成するために形成されており、2017年の自治体調査では51,296のSpecial districtsが存在している。処理する事務は、次のようなものである。
    ・空港、港湾、高速道路、公共交通、公共駐車場、消防、公共図書館、公園、墓地、病院、灌漑、環境保全、下水道、下水処理、ごみ処理、光回線サービス、運動場、水道、電力サービス、天然ガス供給など

【Municipality・Townなどの例外事例】

  • Municipalityには、カウンティと統合されている事例もある。一方、ヴァージニア州では統合されることはなく、市は完全にカウンティから独立しているか、カウンティの一部であるかのどちらかである。ニューイングランド地方では、州政府の直下の自治体はcountyではなくcivil townshipやtownとなっており、場合によっては、カウンティが省略されることもある。多くの州の中山間部では、カウンティの下にMunicipalityそのものがない。

自治体の法人化Municipal corporation

  • 自治体の法人化プロセスとはどのようなものか、ワシントン州の人口2.5万人の小さな町の法人化プロセスの事例を紹介する。この事例は、州政府が州法により、自治体の法人格取得を法令で奨励している中で法人化プロセスが実施されている。法人化の基本的プロセスは、州法に基づき、①住民グループによる要請-②行政境界審査委員会による行政境界の審査-③住民投票-④最初の市議会議員選挙というステップを踏むことになる。以下、実施された検討調査報告書からその実際のプロセスを紹介する。

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(1)    Fairwoodの概要

  • Fairwoodは人口25,000人の町である。ワシントン州キング・カウンティの都市部内のRenton市の東に位置していて、ほぼ住居地域である。

(2)    法人化プロセスの実施状況

  • 州法の1990年都市開発管理法では、都市部の自治体として法人化されていない区域を、積極的に法人化するように推奨している。手法としては、独立自治体の創設でもいいし、隣接自治体による統合でもいい

  • Fairwoodが地理的に所属しているKingカウンティは「Kingカウンティ都市計画指針」を策定し、2012年までに、前記2つの手法のいずれかで、法人化されていない地域の法人化を推進している。

  • 1999年、Fairwoodの住民グループが自治体法人化検討調査の実施をカウンティに要望した。カウンティは2004年度予算で、この地区を法人化すべき優先地区として採択した。2005年9月、住民グループから行政境界審査委員会宛に、法人化のプロセスを開始するよう要請が出された。2006年9月、カウンティは法人化調査報告書を公表し、住民投票に付すことが決定された。

  • 2006年9月、住民投票が行われたが、結果は、差はわずかだったが、現状のまま法人化しないというものだった。このため、2007年10月、今度は別の住民グループが、行政境界審査委員会に対して、再度の住民投票の実施を主張して、訴訟を提起した。ここで紹介している調査報告書は、再度の法人化要望に対し、新たなコンサルタントを雇用し、既存調査を見直した結果の報告書である。

(3)    見直し報告書の目的

  • Fairwoodが市として法人化された場合に、その税収は、現状の住民サービスをよりよくするためのコストを賄えるか、という質問に答えることであるとされている。

(4)    見直し結果

  • 【他の既存自治体等から新Fairwoodに新たに提供されるべきサービス】
    ・    公衆衛生-Kingカウンティ
    ・    学校-Renton教育委員会・Kent教育委員会
    ・    州道-ワシントン州
    ・    交通-Sound Transit・Kingカウンティメトロ

  • 【新Fairwood市から提供されるべきサービス(直営または委託)】
    ・    土地利用計画とその規制
    ・    法の執行(警察・刑務所・裁判・動物保護)
    ・    市道、街路
    ・    雨水浸水対策
    ・    行政一般(市議会・市長・市職員・弁護士・財務・人事)

  • 【他の既存自治体等から新Fairwoodにこれまで通り提供されるべきサービス】
    ・    消防・救急サービス-消防事務組合40・同37
    ・    図書館サービス-Kingカウンティ図書館システム
    ・    近隣公園・リクリエーション施設-Kingカウンティ
    ・    ごみ収集-Kent-Meridian Disposal・SeaTac Disposal
    ・    ごみ運搬・処理-Kingカウンティ
    ・    上下水道-Cedar川上下水道事務組合・Soosクリーク上下水道事務組合

新Fairwoodの行政区域(案)

自治体法人化の事例
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